「 短編集 」カテゴリー

廻り還る街 -Möbius-

 除雪車は重低音と共に、ありったけの雪を押しのけて、押しのけて、歩道を埋めて走っていく。  私が生まれ育ったこの街は、今日も相変わらず

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小欲科学

「手がね、寂しいの。掴めるものが、何もなくて」  友人は逡巡の末、ぽつりと呟いた。  もう一人の友人は、ああ、という曖昧な嘆息を零し

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秋に凍える。

 誰かと付き合ってそして別れるという事は、私にとって、これといって重大事件ではない。  重大といえばもちろん重大だけど、ごはんを食べた

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失楽園

 私は、厳粛と言えば厳粛な、キリスト教徒の家庭で育ちました。  エレベーター式に大学に入り、就職活動をして、とある会社の事務に内定を貰い、

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ハイナン・ララバイ

 照りつける太陽。熱帯地域特有の緑。その二つが化学反応起こして発生される、じっとりとした癖のある匂いの酸素。ぶんぶんと飛び回る、まるでスイミ

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P-O-X

 ――例えば、一番好きな異性に振られて付き合えない時、二番目に好きだった異性にデートの約束をしようとするのは、典型的な「代償

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鶏と卵

「ねえ、福島。私、最近全然連絡取ってないんだけどさ、陽菜ちゃんどうしてんの?」 「ええと。そろそろ半年くらい経つし、前よりはだいぶ落ち着い

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第四次欲求

 僕の自意識を彼とする。  彼の誇大妄想はさながら梅雨の湿気を帯びたかのように逐日肥大化していて、神経過敏なその性質がもたらす緊張性頭痛は

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イヴ

 私は、厳粛と言えば厳粛な、キリスト教徒の家庭で育ちました。  ある程度名の知れた陶芸家である母は、私を初めて身籠り、夫婦を家族生活へと変

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春に凍える。

 ぽつり、と、雫が頬に当たった。  穏やかとは言えない灰色の雲を仰ぎ見る。 「午後からにわか雨の可能性、だっけ」  そんな私の呟きは、

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