鶏と卵

「ねえ、福島。私、最近全然連絡取ってないんだけどさ、陽菜ちゃんどうしてんの?」
「ええと。そろそろ半年くらい経つし、前よりはだいぶ落ち着いてるよ。吹っ切れてるかって聞かれたら、俺はなんとも言えないけどさ」
「まぁ……引きずるよなぁ。話に聞く限りだけど、さ」
「瑞菜も忙しいと思うけどさ、またお茶にでも誘ってやってよ」
「……人使い荒い兄妹だわ、本当」
「はは。なんだかんだで、瑞菜も結構気分転換にしてんじゃん」
「うん。それは否定しない」
「お節介っていうか、気が利くよな。お前」
「お互い様だよ」
「そう?」
「うん」
「俺はそんな気が利かないと思うよ。自分でだけど。自分がいいなら、って感じ、強いし」
「それは自己認識の問題だから、あまり関係ないよ」
「また小難しい話を」
「そう?」
「うん」
「そうかなぁ」
「もうそこは瑞菜さんだから、仕方がないと俺は思っていますよ」
「だってほら、『鶏が先か、卵が先か』っていう有名な話があるじゃん?」
「うん。鶏は爬虫類の突然変異だから、つまりは卵が先だって話だろ」
「その答え、ぶっちゃけ今はどうでもいい」
「ごめん」
「話を戻すけど、この疑問って、人間関係にも通じると思うんだ。福島は聞いた事無い?『最近付き合ってる人に趣味が似てきた気がする』とかって話」
「言われると、たまに聞くかも」
「私は思うんだよね。『付き合ったから似てきたのか、似ていたから付き合っているのか』って」
「そう言われると、確かに鶏と卵に似てるのかもしれないけど」
「うん」
「人間って結局、自分が心地良い環境を無意識に作ろうとするから、『似ている、だから付き合う』が、先にくると俺は思うよ」
「そうだね。私もそう思う。その理屈は知らないけど、『類は友を呼ぶ』っていうもんね」
「瑞菜さ、後期の履修、異文化コミュニケーション論やりなよ」
「なんでさ」
「その辺の話を扱うし、先生が変人でおもしろいし、だいたい出席すればいいようなノリだから」
「んー。まぁ、気が向いたら考える」
「うん」
「にしても、本当。梅雨が明けた途端、この暑さだ。私そろそろ溶けて、スライムにでもなりそう」
「その時はちゃんと、ひのきのぼうで殴ってやるよ」
「それはそれは。なんともありがたい話だね」

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