いっぷくさん(原案) 猫春雨

 高校生の頃、好奇心から一口吸った煙草がすべての始まり。
 むせて吐き出した煙草の煙がもうもうと立ち込め、集まり、人の形を成した。
 いっぷくさん。
 それが私と煙の体を持つ青年との出会いだった。
 年月を経るごとにいっぷくさんの足先から煙が糸のようにほどけてゆく。
 もう今では笑顔をたたえる首しか存在しなかった。
 私はそんな彼をこの世にとどめたくて、煙草の煙を口移す。
 だから煙草の味は彼の唇を思い起こさせた。
 周囲から女のヘビースモーカーなんてみっともないなんて云われているけれど、私は
いっぷくさん中毒なのだ。彼の居ない生活なんて考えられない。
 でもいっぷくさんは笑ってこう云う。いつか君も甘いキスを覚えて僕のことなんてすぐ
に忘れてしまうさ、と。
 そんなことないわ!
 そう云われるたびに駄々っ子のように否定する私にいっぷくさんは少し困った顔をする。

スポンサーリンク
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
スポンサーリンク

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です